少し前からわたしがツイッターで頻繁に発している言葉があります。
「カナタくんのツイッターやばい」
何がやばいのかといえば、カナタくんのツイッターは「これから絶望に陥ることをまだ知らない、希望に溢れる人間のリアルタイムを見せられている」という闇が深すぎるエンタメなのです。
カナタくんは我々と同じ星に住む高校生。
コロナで授業がリモートになったり、子供の頃行ったとしまえんが閉園したり、アクタージュが連載終了する世界に住んでいます。
マックの前通ったらハッピーセット ドラえもんだった。懐かしいな、好きだった。なんの道具が欲しいかとか考えたなー
— kanata (@kanata_1202__) 2020年8月29日
zoomだって今年の初めは知らなかったのに今はこれで授業したりなんて信じられないな...Google classroomもそうだけど。
— kanata (@kanata_1202__) 2020年7月30日
高校生にしてはちょっと冷めた視点を持っているようですが、弟と喧嘩した話や友達(横溝海斗くん。カナタくんの唯一のフォロイー)との他愛ないリプや、大学生になったら…という話、あまりにも普通の高校生の日常で「実はまじで関係ない一般人のツイッターなのでは…？むしろそうであってくれ」と思ってしまうレベル。
始業式、なんか広々座ったりしたけど、やっぱりみんなに会えたのは嬉しかった。久しぶりにスマホアプリで対戦した。楽しい
— kanata (@kanata_1202__) 2020年8月19日
これだけならただのバーチャル高校生アカウントです。私がなぜ闇が深いと騒いでいるのかというと、
カナタくんは来年宇宙を統べる統治機関に招集され、永い時を過ごすので親兄弟友達とは二度と会えなくなるが、本人は今そのことを一切知らないからです。
はい突然ファンタジー！！！
カナタくんね、『アンジェリーク ルミナライズ』(以下『アンミナ』)という2021年発売予定のゲームの登場人物なんですよ。乙女ゲーの攻略対象。
えっ信じられない？公式サイトのキャラクター紹介にツイッターへのリンクがこっそり貼ってあるので信じてください。
なぜ闇が深いのかを本気で説明したいのでこれから『アンジェリークシリーズ』及び『アンミナ』の世界観の説明をしますが、普通にめちゃ長いので結論だけ先に言っておきます。
「時間経過の違う場所に連れて行かれるので浦島太郎になります」ということです。以上。いや以上じゃない。
ここから世界観の説明。まじで長いのでしばしスクロールしてください。
誤解を恐れずいえば宇宙をかける西洋ファンタジー。
作中では「女王」が宇宙の秩序を守っており、「守護聖」と呼ばれる9人の男性が女王を支えています。イケメンパラダイスです。
その宇宙統治を行う、霞ヶ関とかホワイトハウス的なものが「聖地」。
最近は「聖地巡礼」とかでフランクに使われるようになった言葉なのでニュアンスの受け取り方が変わってきそうだなぁ(余談)
聖地は宇宙統治のため下界とは異なる超ゆっくりな時間経過で動いています。
つまり、下界から聖地に来てそこで数年(具体的な年月の相関は不明)を過ごした場合、また下界に帰っても知ってる人間は誰もいないということが起こり得ます。竜宮城ですね。
女王や守護聖の在任は永遠ではなく、能力の減退等で代替わりがあります。
女王の退任が決まったときは、後任の女王候補を宇宙の全惑星の中から2人選び出して、どちらが女王に相応しいか試験を受けさせます。これが女王試験。
そして今作『アンミナ』の舞台がこの女王試験。
ちなみに女王試験中は一般人の出入りがあったり、そもそも落ちた女王候補が地元に帰ることも想定されるので一時的に下界と合わせた時間経過が設定されます。
守護聖になるのに試験は特にありません。
ただし「サクリア」という宇宙を統べるための特殊な力を発現した人間しか守護聖になれません。
そのサクリアを発現する人間が非常に限られているので、現任者の力が衰えてきたときに後任としてサクリアの力を発現した人間は聖地へ強制連行です。
(ちょっとうろ覚えで不正確なんですが、現任者のサクリアが衰え始めると同時に後任者のサクリアが発現し始める、だったはずなので同宇宙の同時期に複数の守護聖候補が現れることはないはず…)
現任の守護聖の力が比較的ゆっくり衰えてきた場合は余裕を持って引き継ぎができるので、比較的平和に着任できますが、
現任の力が急激に衰えた場合は急いで後任を連れてこないといけないので、家族や親友に別れを言えてなかろうが、仕事に邁進していようが聖地に連れ去られてしまいます。
なので、高確率でグレます。
ちなみに過去作の世界では一族から女王や守護聖を輩出するのは大変名誉なこととされており、それなりの責任感やプライドを持って聖地にやって来る方もいるのですが…
カナタくんと『アンミナ』の主人公(=プレイヤー)が住む世界では女王や守護聖のことは単なる神話となっているようです。「守護聖になるので退学します」って言ったら普通に頭がイカれたと思われるやつ。仮に友達に別れを告げる時間があったとしても意味不明すぎて誰も信じてくれないやつ。「何アンジェリークみたいなこと言ってんのww」って言われるんだとおもう。つ、つらすぎる…。
あと残された家族も訳わからんだろうし捜索願とか出してないか心配。(そうじゃない)
さて、ここまで長々と説明しましたがついて来ていただいてますでしょうか……読み飛ばした人はここから再開してね。
私がカナタくんのツイッターを面白がっている(言い方が悪すぎる)理由は主に2つあって、
①過去作のキャラクターと重ねて見る既存ファンの目線
②2次元キャラクターのツイッターアカウントとして斬新すぎる運用
順番に説明します。
①過去作のキャラクターと重ねて見る既存ファンの目線
さっき「急いで聖地へ連行された人はグレる」と書きました。読んでない人は10行ぐらい戻ってください。
アンジェリーカー(アンジェファンの名称)はこの具体例をめちゃめちゃよく知ってるんですよね…。
『アンジェリーク』(初代)で登場する神鳥の鋼の守護聖ゼフェル様の話です。
ざっと言うと彼も難しい年頃でいきなり聖地へ連れてこられた、別に守護聖になりたくないのに…。という方です。しかも同年代の守護聖がそこそこやる気あるのと、先代も急なサクリアの減退でメンタルが不安定になっていて折り合いが悪く…という感じで非常に苦労なさっていました。
詳細を書くととんでもない長さになるので詳しくは由羅カイリ先生の公式コミカライズをお読みください。(丸投げ)
私は「この悲劇を繰り返してはならぬ……」と思っていましたが、残念ながら歴史は繰り返すようです。
……っていうかコーエー神がそのように作ってるんですよね！！
だからこの先カナタくんが守護聖に選出されてから着任するまでや、聖地に行ってからの苦労がある程度予想できてしまうわけです。
そして、これまでの守護聖様と決定的に違うのは「カナタくんのいる星は我々と同じ星だ」ということです。
超かいつまんだ話になるのですが、これまでのアンジェシリーズの登場人物の出身地はほとんどが中世西洋ファンタジーやオリエンタル風な世界で、現代日本とはかけ離れています。
つまりカナタくんの現代日本での「守護聖になってない人生」が他のどのキャラクターよりも想像がついてしまうのです。
普通に就職してだれかと結婚して、普通に帰って普通に眠る、そういう人生です。
その上「コロナで学校行事も満足にできず、気軽に遊びにも行けない」このご時世ですよ…。
学校帰りの遊びってカラオケが一番多かったな。落ち着いたら嫌になるほど遊びたいな。きっとみんなそーだよね
— kanata (@kanata_1202__) 2020年9月2日
アルバイトしてみたい。学校で禁止されてるから無理だけど、大学行ったら。なにがいいだろ...オレ接客は向いてないような気がするけど
— kanata (@kanata_1202__) 2020年8月6日
上の世代が「青春の象徴」としてきた年中行事がほとんど完全な形で叶えられないままこの世界から離れなければならないカナタくんのこと考えてみて…？
しかも自分が再来年（2020年現在高校2年生）大学生になることを信じて疑ってないんですよ…。
もうカナタくんのこと今すぐぎゅっとしてあげたい。
②2次元キャラクターのツイッターアカウントとして斬新すぎる運用
現代社会が舞台の乙女ゲームは数えられないくらいあるし、二次元キャラクターのツイッターアカウントというのも相当な数があるはずです。
が、ゲームの販促として「ビフォアストーリーを本人名義のツイッターアカウントで展開する」って斬新すぎる試みだと思うのですがいかがでしょうか。
しかも、固有名詞や時事ネタを多用してカナタくんが今、同じ時間を生きていることが強く実感できる仕掛けになっています。
そして2次元キャラクターのツイッターアカウントで最大の障壁になるのが「写真で顔出しできないこと」です。
顔を出さずに風景を映してみたり、開き直って自撮り風イラストを上げたり、克服方法は色々ありますが、
そもそもカナタくんは一般の高校生なので顔出ししていなくても何の不思議もありません。設定の勝利。
そしてこれが妙なリアリティを生み出しており、冒頭で書いたように「まじで関係ない一般人のツイッターに見える」んですよね…。
そんな我々のタイムラインに自然に馴染むカナタくんが、いきなり聖地とかいう訳わからん場所に連れて行かれるなんて、あまりにも非現実的すぎますね。
ところで『アンミナ』の主人公（プレーヤー）は現代社会に生きる社畜OLという設定です。
また、公式サイトで主人公とカナタくんは同じ場所の出身と明記されています。
つまり、現代日本に生きるカナタくんが一足先に聖地へ連行される（言い方が悪すぎる）ことで、のちのち現代日本から女王候補として聖地へ召喚される「わたし」のことがよりイメージしやすくなる効果もあるように感じます。
(私がここ最近2次元に深入りしてないので、もし既に同様の試みがあればここはスルーしてください。完全にただ私がドヤって恥ずかしいだけのやつです)
『アンミナ』の発売日が未発表(2021年発売)のためいつになるかは分かりませんが、そう遠くないうちにカナタくんが「聖地から使者が来た」という訳の分からない話を始めるはずです。あるいは突然更新が途絶えてしまうのか、どういう形かはわかりませんが、今後必ずカナタくんのツイッター更新は終わりを迎えます。
カナタくんのツイッターは絶望の一歩手前にある儚い青春の最期をリアルタイムで見届けるコンテンツです。
明日健康診断なんだけどオレはまだ伸びるのかな
— kanata (@kanata_1202__) 2020年9月9日
皆様のタイムラインにも、カナタくんのツイートをぜひ。
そしてツイッターの続き、カナタくんのこれからの人生を2021年発売『アンジェリーク ルミナライズ』で見届けてください。
(複雑になるので飛空都市の説明を全部省いてしまったのですが、女王候補の皆様においては大らかな目で見ていただければと思います…。)
最後にもし億が一これをコーエーの人が見てたらぜひ言っておきたいんですが、
アンミナが売れたら聖獣のコンテンツも出してください……聖獣担からのお願いです……何卒……。
2021/5/1追記：恐れていたXデーがついに来てしまったので、本稿で書ききれなかった説明も加えつつ後日談エントリを書きました。
